2011年9月14日 16:00-18:00

空間的思考と地理情報科学の現在と未来

マイケル F. グッドチャイルド マイケル・バティ


マイケル・グッドチャイルド「空間的思考とGISユーザインターフェース」

地理情報科学は地理情報の基本的な問題の県境として定義することが可能です。そしてまた、地理情報技術の発展のモチベーションにもなります。そうした技術発展の問題は、ユーザインターフェースのデザインと同時に、技術によって可能な作業と、人間がやりたいと思う作業の関係とも関わってきます。この問題で、GISのユーザインターフェースと機能についての問題ほど重要なものはありません。今日、空間的思考の概念の理解の研究がすすみ、より一層の機能とユーザインターフェースのための基礎が形作られてきています。この発表では、これら今までの努力についてお話しするとともに、GISをもっと簡単に教え、マスターし、使える、そんな未来の話をいたします。


マイケル・バティ「地理情報科学のモデリングとシミュレーション:これまでの成果とこれからの挑戦」

地理学で計量革命が起きて50年になります。その間、私たちは地理システムのモデル化の構築と実施という点で、多くの進展がありました(Batty, 2010)。これらの進展は、デジタル用語でいう空間的システムの表現能力の変化によって推進されてきました。その一方で、この科学分野が当初考えられていたものよりもずっと豊かなものに違いないという考えが、どのように私たちがばらばらでかつ時間的にも動きのある大きな不均質性を扱うシステムを思いつくかという点で大きな発展をもたらしてきました。ここでは、この分野についてのこれまでの発展、つまり古典的な科学モデルを用いた動きのない簡素化されたモデルにどれだけ集約されているかを説明することが、ある地点における作用の構成と動作の核となる個々の因子に関してより精度の高いモデルであったか、を再確認していきます。これらのモデルの発展の過程はすべて重要で、その過程があってこそ、モデルの発展につながってきています。科学も方法が変わりつつあるこの世界では、こうしたシステムは発展し続け、これまで以上に複雑さが増すシステムは以前の空間理論とは次第に離れていきます。そうなると、どのようにモデルを明確に表現するか、理論はどうそれらを実証するか、正当なものであるのか、それらは私たちが直面している都市化、人工、安全、エネルギー、気候変動といった大きな挑戦の中核をなす政策立案に役立つかなどの点において、新しい視点が必要となってきます。ここでは、50年以上にわたり開発してきた様々な伝統のためのさまざまなアプローチを用いたグレーター・ロンドンのための都市の土地利用、交通モデルの様々な例を使った理論を発展させていきます。そして、地理情報科学の役割を見直し、多くの関連した視点から、豊かにし、豊かにされる方法を提案したいと思います。


  • スピーカー
  • マイケル・グッドチャイルド(Michael F. Goodchild)
  • カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授(地理学)・同校空間研究センター(Center for Spatial Studies)センター長。全米科学アカデミー、米国American Academy of Arts and Sciences、イギリス王立科学院など、海外の数々の学術団体のメンバーに選出、また研究の功績から、数々の賞を受賞。多くの学術雑誌の編集長、編集委員、編集長務め、これまでに15冊以上の本、400本以上の研究論文を発表。米国学術研究会議の地図科学委員会委員長、アメリカ国立科学財団の社会、行動、経済科学の諮問委員を歴任。現在は、地理情報科学、空間分析と地理データの不確実性などに関心がある。

  • マイケル・バティ(Michael Batty)
  • ユニバーシティカレッジロンドンBartlett教授(都市計画)、同大応用空間分析センター(CASA)センター長。これまで、都市や地域のコンピュータモデルの開発を中心とした研究を行い、多数の書籍、研究論文を発表。現在は、都市システムへ応用したスケーリングを含む社会物理学の新手法が研究テーマである。英国学士院、英国王立アカデミー会員、2004年、地理学への功績により、エリザベス女王からQueen’s Birthday Honoursで上級勲爵士を受賞。